ネガポジ日記 #7「大人の〇〇」

大人の現場にいます。


大人のってつけるとなんだかえっちだけど、そういうことじゃなくて、プロの現場です。


プロの劇団の稽古場にいます。


プロとアマの違いは、いまのところ、それで食っていけてるかどうかってことにしてます。


大学のツテを使い、コネを使い、なんとか潜り込めた今回の稽古場。

演出部というスタッフさん側のポジションで自分はやってます。


演出部というのは、舞台監督補佐ってもので、わかりやすく言えば、お手伝いさんです。装置さんの大道具を一緒に作ったり、小道具を用意したり、役者さんのセリフをチェックしたり。

たいへんです。


でも運良く、セリフがすこしある役をもらえました。

これはラッキーだ。


憧れの女優さんや俳優さんたちと同じ舞台に立てるとワクワクしました。


しかし現実は厳しい。


いざ稽古場で舞台に立っても、何もできない自分がいました。


みなさんが口を揃えて言ってくれます「稽古場は失敗する場所なのだから大丈夫だ」と。


本当に優しい方々で、自分も「よっしゃ!」と思います。


でも、また立ってみると、何もできないのです。


誰かが言ってました。チャンスはそうくるものじゃないと。


もしもこれが一般的にいうチャンスというものなら、僕は掴み損ねてます。前髪しかない幸運の女神も、今や前方遥か彼方。


演出家の言葉が濁るたびに自分の存在が薄くなって消えてしまえばいいと思います。

たまたま人が足りてないから回してくださったのに、そんな自分が、役者でもない自分が稽古場で時間を使ってしまい、迷惑をかけてると思い込みます。

僕の脳みそはどうやら、死ぬほどネガティヴに出来てるらしい。


おかげさまで、どんどんセリフは減っていきます。

他の役者さんの負担が増えていきます。

自分の力の無さが、こんなにも露骨に周りに迷惑という形になって渡ってゆく。

心が空っぽになっていきます。

涙なんか出ません。

そんな余裕ありません。


遂に、またひとつセリフが消えました。



なんとなーく、喫煙所に行って、タバコに火をつけました。プカプカ浮かぶ煙がだんだん空に向かい薄くなっていきます。


そんな時に、喫煙所に大女優のTさんがいらっしゃいました。


あそこのセリフはどう言うべきだったんですかね。と笑いながら、話しかけてしまいました。

Tさんは、真剣に答えてくれました。素直にそれが嬉しかった。


だから


もうセリフは減らさないように頑張ります!と、冗談めかして、無理矢理の笑顔で言ってやった。


そしたら


お芝居は、セリフだけじゃない。動きも雰囲気も表情も。そういうとこも見てるんじゃないかな。セリフの1つや2つなんだって思いなさい。


文字に起こすと当たり前すぎて恥ずかしいけど、その言葉が、自分の空っぽの心に突き刺さった。そこから溢れた気持ちがすこし目から出そうになったけど引っ込めた。


ようやく、吹っ切れた。


セリフがどんどん減ることにビビって、何も出来なかった自分が、あの方の言葉で、ふわっと煙になって空に舞って行った。



今だってまだまだまだ怒られるし、演出家を悩ませている。けど、だけど、なんかもう大丈夫。それでもアイデアをなんとかぶつけ続ける。


プロってすごいなって思った。



プロとアマの違いは、それで食っていけてるかどうかにしようと思う。




だけど、今いる稽古場は、普段ぼくがいる稽古場にすこし似てる。

みんな、ひとつのものを作ろうとワクワクしてる。



あーーー、これこうやると面白いね。

それ良いね、面白い。

そこは、こうしたほうがこう見えるんじゃないか



プロとアマの違いは食っていけるかどうか。


アマがプロになるには、どうするべきか。


とりあえず、アマの自分は、このまま続けていこうと思った。


なんか、間違った方向に進んではないような気はする。



今日は頑張ったからハンバーグを食べる。

おやすみなさい。