エモエモ日記 #7 「たぶん猫」








「猫が飼いたい。」







向かいに座る男がこっちを見やった。


訝しんでいるようにも、苦笑しているようにも見えた。







「猫が飼いたい。」







終電の電車内に響く弱々しい声は、間違いなく自分の口から漏れていた。




普段なら気にする周囲の目も、今は気にならない。


そこに意思はなく、ただの感情だけがあった。





内に留めておくことができないほど迸る感情。


抑えることは不可能だった。








「猫が飼いたい。」







僕は孤独に狂わされたのかもしれない。



もしくは、ストレスから来る疲労のおかげか。








「猫が飼いたい。」








どちらでも構わなかった。



もう頭の中はスコティッシュフォールドでいっぱいだったから。














着の身着のまま自室の床に倒れ込む。



いつの間にか帰宅していた。



布団まで動くことも煩わしく、このまま寝てしまいそうになる。






こんなとき、疲労も一瞬で吹き飛ばすほどの癒しがあれば...。












そのときだった。




不意に、温かくて湿った何かが頬を撫でた。










いや、「撫でた」のではなく、「舐められた」。




おもむろに顔を上げた。








そこにいたのは、たぶん、猫だった。











猫っぽいが、なんとなく猫ではない気がする。






猫といえば猫なのかもしれない。







恐らく猫だった。












まあ細かいことなどどうでもいい。




あれだけ飼いたいと思っていた猫が、こうして自室に、目の前にいるのだ。



今はただ喜びだけを噛み締めていたかった。