エモエモ日記 #3 「過剰人間」


視野が広がる瞬間が好きで、大して興味のなかったものが、自分の中で急激に価値が上がる感覚、あれが良いなと思う。最近の話で言えば、西加奈子の小説を読んだとき。あぁ面白かったなあと思うのと同時に、もっと読みたいと思った。その瞬間に、あまり手に取ることのなかった「西加奈子の本」が自分の中で価値のあるものになった。本屋に並ぶ西加奈子の書籍たちが一つ一つ価値のあるものとして見えてきて、視野、少しだけ広がったぞ!と実感する、あの瞬間。ちょっとだけ大人になったような気がして嬉しくなる。このブログの冒頭では毎回、考えたことをこうして改行もせず煮こごりみたいにぎゅっと練り固めているのは、視野を広げるのとは逆の行為。考えひとつひとつが指標。いつでも戻ってこられるようにしておきたいという意思でもあり、もしここを熱心に読んでくださる方がいたら金一封を差し上げますのでご連絡ください。






恥ずかしながら、僕は自意識が過剰です。

近頃強く感じているので、いい歳になるまでにはできる限り抑えていきたいとは思っているんですが、今のところはちょっと過剰です。温かく見守ってくださると幸いです。(こういう発言も過剰なのかな、と過剰に敏感になっています。常に盾を構えて見えない敵から防御中です。)



他人に熱心になれないまま演劇をやっているのが現状なんですが、克服していきたいことが幾つかあり、その内のひとつが「客出し」です。


小劇場などではよく、お芝居が終わるとロビーに出演者がわらわらと集います。

劇場を出るお客様を見送ったり、物販を宣伝したりしています。お話したいというお客様は出演者と対話もできます。そういうシステムを客出しと呼ぶそうです。



この文化に触れたことの無い人にはわかりづらいかもしれないんですが、要はさっきまで見てたお芝居に出てた人たちが笑顔で出迎えてくれます。


「今日はご来場くださりありがとうございます!」

「いえいえ、こちらこそ楽しませていただきました。お疲れ様でした。」

「わー!来てくれたんだ!ありがとー!」

「来ちゃったよ〜、めっちゃ面白かった〜!」


などと、出演者たちとお客様との賑やかな談話が飛び交い、ロビー内はまるで温かく賑やかな空気に包まれます。





めちゃめちゃ怖くないですか?


わからないという方は、聞く耳だけ残しておいていただけると助かります。




誤解してほしくないんですが、決して客出しが嫌いなわけじゃないんです。ただちょっと、この文化に僕が未だ慣れていないんです。

それと、役者として「客出す」立場のときは、どちらかといえば楽しいです。それは本当です。



ただ、「客出される」立場のお客さんとしてホールから出たときに、さっきまで見てた役者がロビーにずらーっと並んでいる光景。

さっきまでの劇場とは違う、同窓会のように賑わっている空気。

それがなんというか、若干怖い。


初めて小劇場に訪れたときも、その空気感を目の当たりにしたとき若干狼狽えたのを覚えています。

未だに「その空気感に慣れていない自分」を客観視してしまい、妙に恥ずかしくなったりします。誰も気にしていないとわかっていても。過剰人間たる所以。




ただ、客出しを撲滅したいという気持ちはありません。何故なら、先述の通り「客出す」立場としての楽しみは理解しているからです。また、「客出される」立場にとってもこれは観劇の一つの醍醐味であるからです。



あの空気感は苦手なんですが、それでも役者を素通りして帰るのも忍びなく、出来ることなら顔を見られないようにしつつ「お疲れ様でした」と一声掛けて帰りたいという思いがあります。僕以外にもこういう人はいるんじゃないかと推測します。



なので、そういう人たちのために、僕はこういう打開策を考案しました。



名付けて、「客出し集中カウンター」です。


名前だけでピンと来た人もいるかと思います。



モデルは、「一蘭」というラーメン屋に存在する「味集中カウンター」です。

味集中カウンターとは、「作り手の雰囲気を一切排除し、お客様に一杯のラーメンのみと向き合い、周りを一切気にせず召し上がっていただける環境」をコンセプトに考案された画期的なシステムです。

それを応用し、客出しにも利用します。






ロビー内に仕切り板のあるカウンターを用意し、そこに役者が待機します。

観劇後、面会したい方はこのカウンターに並びます。対面時に役者の顔は見えません。反対に役者からもお客様の顔は見えません。

この仕組みによってお互いの緊張状態を解放し、リラックスした会話がお楽しみいただけます。

また、すっぴんで観劇に来てしまった時にも役立ちます。女性の方にも優しい設計です。




「役者に声を掛けたいけど、他の方との会話が盛り上がっており、声を掛けるタイミングを伺いつつ周辺をウロウロしてしまういたたまれない」状態の緩和にも役立ちます。

カウンターは順番待ちなので列が生まれます。列に並ぶことにより、どこに居ればいいかわからずぽつねんと立ち尽くす恥ずかしさは無くなります。


そして、この「客出し集中カウンター」はロビーの隅に設置されており、客出しが苦手すぎて誰にも顔を見られずそそくさと帰りたいという方の願望をも叶えてくれます。


自意識が過剰な方への配慮も完璧です。

むしろ、自意識が過剰な方のためのシステムです。

っていうか僕のためのシステムです。



僕のために取り入れてくれる劇場が増えることを祈っております。

何卒ご検討ください。


@演劇関係者各位

@喜劇のヒロイン団員各位

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